2016年10月1日土曜日

茫然自失から立ち上がる

眠れない夜

5人の将軍を含む仲間のギリシャ兵が殺害された夜、ギリシャ軍陣営には深い絶望感があった。 彼らは自分の生まれ故郷 πατρίς , ίδος に再び戻ることができないのではないか、妻や子供たちに会うこともかなわないのではないかと恐れた。

クセノフォンも眠ることができず悶々としていた。しかしようやく眠りに入った時、夢τὸ ὄναρを見た。 彼の父親の家に大きな稲光と雷鳴が落ちて家は火に包まれた。彼は恐怖で飛び起きた。

そして彼の頭に生じた疑問は: τί κατάκειμαι; なぜ自分は横になっているのか。 誰も何の準備もしていないではないか。 このことに気づいたクセノフォン(20歳代後半)1はプロクセナス将軍の部隊に出向いて部隊長を集めて次のように説いた。 —1.Introduction,Xenophon Anabasis,The Loeb Classical Library,p.3,1998 [III.1.11]

クセノフォンが立ち上がる

ペルシャ軍は準備が整えば襲って来る。しかし我々は何の対抗策も立てていない。

この王は自分の弟さへ首と手を切り落とし、杭にはりつけた。もし彼を王位から追い落とそうとして戦った我々が彼の手に落ちたらどんな運命が待ち受けているだろうか。 我々はどんなことをしても彼の手に落ちることのないように努力しなければならない。

我々はこれまで和平を誓った立場上、こちらから攻撃することも略奪することも控えてきた。 しかし、和平は彼らの行動によって既に破られた。 この土地の十分すぎる富は勝者のものだ。 戦いの判定者である神々は誓いを守った我々の味方だ。 [III.1.15]

集会で新体制が決まる

彼らは各部隊を回って将軍、副官、部隊長ら指揮官たちを呼び集めた。その数はおよそ100名で真夜中だった。 その集会でクセノフォンを含む新しい5名の将軍が選出された。

夜が明けるころ、全員を集めた集会が開かれた。

指揮官たちの中のリーダーであるスパルタ人ケイリソポスが次のように呼びかけた: 栄光ある勝利によってこの窮地から脱出しよう。それができなくても戦って栄光ある死を選ぼう。 決して敵の手に落ちることがあってはならない。

続いてクセノフォンが立って「ペルシャ軍を信頼して身を任せた将軍たちは殺害された。 ここで立ち上がる我々に神々のご加護があるだろう。」と語った時に一人の兵士がくしゃみをした(くしゃみは吉兆であると信じられていた)。 「救い主ゼウスのご加護のしるしが今、示された。私は動議を提案したい。もし敵地を脱したらゼウスに感謝の犠牲を捧げよう。 賛成の諸君は手を挙げて欲しい」。全員が挙手した。声を出して誓い、敵軍に突進する際の鬨の声をあげた   ἐπαιάνισαν。[III.2.9]

ギリシャ語教室

οἱ μὲν δὴ στρατηγοὶ οὕτω ληφθέντες ἀνήχθησαν ὡς βασιλέᾱ[ᾱ] καὶ ἀποτμηθέντες τὰ[ᾱ]ς κεφαλὰ[ᾱ]ς ἐτελεύτησαν, εἷς μὲν αὐτῶν Κλέαρχος ...ἀνὴρ καὶ πολεμικὸς καὶ φιλοπόλεμος ἐσχάτως. Xen. Anab.[ 2.6.1]

  • ληφθέντες アオリスト第1受動態分詞男性複数主格> aor. “ἐλήφθην”λαμβάνω
  • ἀνήχθησαν アオリスト第1受動態3人称複数 >aor.Pass.ἀνήχθην ἀνάγω (上へ)連れて行く
    ἀποτμηθέντες アオリスト第1受動態分詞男性複数主格>
  • ἐτελεύτησαν最期を迎えた> τελευτ-άω 満たす、終わる、成就する
  • εἷς μὲν αὐτῶν Κλέαρχος 彼らの一人クレアルコスは・・・
  • ἀνήρ , ὁ, ἀνδρός, ἀνδρί, ἄνδρα,男、人間、夫(おっと)
  • πολεμ-ικός , ή, όν戦争の、戦争に巧みな
  • φιλοπόλεμος , ον戦争が好きな
  • ἐσχάτως非常に
こうして(門の中へ)招き入れられ、王のところへ連れて行かれた将軍たちは首をはねられ死んだ。
その中の一人(スパルタ人)クレアルコスは戦争に巧みなことと好戦的な点で究極の男であった。

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ὁ βασιλεύ-ς king
Sing. Pl.
Nom.βασιλεύ-ς (βασιλῆς, later ) βασιλεῖς
Gen.βασιλέ-ων
Dat.(βασιλέ-ι) βασιλεῖ
Acc. βασιλέ-ᾱ
Voc. βασιλεῦ βασιλεῖς
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正解


ὁ βασιλεύ-ς ἡ γραῦ-ς ἡ ναῦ-ς ὁ, ἡ βοῦ-ς king old woman ship ox, cow Nom.
Sing. Pl.
Nom.βασιλεύ-ς (βασιλῆς, later ) βασιλεῖς
Gen.βασιλέ-ως βασιλέ-ων
Dat.(βασιλέ-ι) βασιλεῖ βασιλεῦ-σι(ν)
Acc. βασιλέ-ᾱ βασιλέ-ᾱς
Voc. βασιλεῦ βασιλεῖς

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クセノフォン「敵中横断」

紀元前5世紀末、クセノフォンという軍人がいた。
彼は友人の将軍プロクセナスに誘われてギリシャ
傭兵部隊に参加することになった。
英語読み ゼノフォン
古典ギリシャ語 クセノッポン

ペルシャ王の弟キューロスが王位を奪うために挙兵し、
傭兵部隊はその作戦に参加した。

紀元前401年夏、バビロンの近くで行われた決戦で
キューロスはあっけなく戦死してしまう(I.8.28)。

敵地に孤立

かくしてギリシャ傭兵部隊1万人は敵中に取り残された。
さらに状況を悪くする事件が起こる。巧みに近づいてきた
ペルシャ軍将軍がギリシャ人に和平とギリシャへの無事な
帰還を保証しようという。その話にのって話し合いのため
ペルシャ軍陣地を訪問した5名のギリシャ軍将軍は
一緒についていった部隊もろとも殺害された(II.6.1)。
主だった指揮官を殺してしまえばギリシャ軍は混乱して
容易に平定できるだろうというのがペルシャ軍の狙いであった。
 クセノフォンを誘ったプロクセナスも殺害された一人だ。

敵地を北上し祖国をめざす


場所は広大なペルシャ帝国のほぼ真ん中である。
ここから執拗なペルシャ軍の追撃を受けながら
ギリシャ軍の敵中横断が開始される。
行程は一難去ってまた一難の連続だ。険しい山を越え、
深い河を越えなければならない。背後はそそり立つ山、
前は川、対岸には敵軍がいる・・・という窮地に立つことも
珍しくなかった。

クセノフォンは指揮官の一人に選ばれ重要な役割を果たす。
ギリシャ人たちはこの土壇場をどのように切り抜けたのか、
幸い、クセノフォンが詳細な記録を残している。

当時ギリシャではアテナイがスパルタに敗れ覇権を
失った直後であった。傭兵部隊の最高指揮官も
スパルタ人だ。

クセノフォンの現代的意義

現代の日本人がクセノフォンを読む意義はどこにある
だろうか。 日本はバブル崩壊(1991年ごろ)以降、
抜本的な手を打つことはなく、いたずらに国債を印刷して
きた。福島原発の汚染水も凍土壁は失敗し、お先真っ暗だが
政権は「完全にコントロールされている」と振る舞っている。

ずるずると規定事実が積み重なる日本

なぜ日本人は直面する問題に正面から取り組もうとしない
のだろうか。日本が真珠湾攻撃を決行してアメリカとの戦争
を開始した(1941)状況が現在の状況とよく似ている。ほとんど議論は
なく(軍部に引きずられて)開戦に踏み切った。さらに特徴的な
ことはその決断を下した責任者が明確でないことだ。

アメリカではルーズベルト、イギリスではチャーチル、ドイツでは
ヒットラー、ソ連ではスターリンが最高指揮官だ。しかし日本の
場合、御前会議で決定した。では天皇が決めたのかというと
そうではない。天皇は戦争に自信がなくアメリカとの戦争を避けたい
と望んでいた。


戦前の日本では天皇が統治し、内閣はそれを助けるという立場だ。
首相を決めたのは天皇だ(大命降下)。一方、陸軍、海軍は天皇に
直属して内閣は手も足も出せない。軍部が後に暴走を始めた時に
それを抑える仕組みが最初からなかった。

陸海軍が国防省の下にあるアメリカとは大違いだ。
東京都知事が指摘している通り日本のやり方は今も変わっていない。

作戦指令室

 立案、決定、実行のプロセスの違いが具体的に分かる一つの例が
作戦指令室だろう。

アメリカ、イギリスでは陸軍、海軍の上に統合参謀本部がありここで
作戦を決定した。指令室には時々刻々変化する状況を表示する
地図があった。日本にはこういうものはなく、作戦はいわば密室で
決められたか、現地軍が勝手に行動し、それを中央が追認した。

作戦指令室(第2次世界大戦アメリカ)

今、都心を歩くと建築ラッシュを実感できる。銀行がジャンジャン融資
しているのだ。しかしこれもやがて必ず行き詰まり、日本は土壇場を
迎える。

このブログでは祖国帰還を目指して敵地を横断したギリシャ軍が
直面した土壇場の数々を読んでいきたい。彼らがどのように議論し
作戦を立て実行したのか、そこから学ぶべきことは多い。

ギリシャ語教室

ἦν δέ τις ἐν τῇ στρατιᾷ Ξενοφῶν Ἀθηναῖος, ὃς οὔτε στρατηγὸς οὔτε λοχαγὸς οὔτε στρατιώτης ὢν συνηκολούθει, ἀλλὰ Πρόξενος αὐτὸν μετεπέμψατο οἴκοθεν ξένος ὢν ἀρχαῖος:[III.1.4]
ἦν "be"動詞未完了過去 δέ
τις ある男が(不定代名詞)
οὔτε ... οὔτε Aでもなく、Bでもない
 στρατηγὸς 将軍
λοχαγὸς "captain"
στρατιώτης兵卒
ὢν  現在分詞"be"動詞
συνηκολούθει一緒について行く  
μετεπέμψατο 呼びにやる、招く
οἴκοθεν 自分の家へ
ἀρχαῖος最初からの

 軍隊にクセノフォンというアテナイ人がいた。彼は将軍でも部隊長でも兵卒でもなかったが従軍していた。ただ古い外国の友人であるプロクセノスがアテナイの彼のもとへ(一緒に来ないかという)誘いを寄越したからだった。

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"be"動詞未完了過去
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1.ἦ or ἦνἦμεν
2 ἦτε
3
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古典ギリシャ語最初の教本I II III IV
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玉川直重 新約聖書ギリシャ語独習解答
土岐健治 新約聖書ギリシャ語初歩解答


東京都知事記者会見 2016年9月23日
私は座右の書が日本軍の失敗の本質という、「失敗の本質」というタイトルで、大変名著とされるわけですけれども、ミッドウエー作戦からガダルカナルとか、日本軍がいかにして負けたかという、そういう本なのですけれども、経営書として読んでも面白いし、面白いと言ったら先人に失礼だと思いますけれども、それぞれ何をどうやって間違ったかというのは、大体失敗に共通することで、要は楽観主義、それから縦割り、陸軍と海軍の縦割りとか、それから、兵力の逐次投入とか、こういうことで日本は敗戦につながっていくわけですけれども、都庁は敗戦するわけにはいきませんので、それは都民の皆さんの命を預かっているし、食も預かっているし、そういう意味で、私はこの5人の市場長、それぞれそのまま率直におっしゃっているのだとは思いますけれども、そのあたりの責任をどこまで感じておられるのか、それから、それをどうやって後輩のために生かしていくのか、そういったことに大変関心があります。
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1.ἦ or ἦνἦμεν
2 ἦσθαἦτε
3 ἦνἦσαν

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